「ねえ、真壁さんってさ、彼氏とかいないの?」



唸るような音と、耳をつんざくような大きな機械音が鳴り響く作業場で、耳栓をしていて本来は聞きずらいはずの声なのに、なぜかその言葉だけが自分の耳にハッキリと入った。

私は慌てて「一時停止」と書いてある下のボタンを押し、掛けていた保護メガネを上げて、声を掛けた男の方を向いた。

彼はワイシャツの上に鼠色の作業着を羽織り、後ろ手にバインダーを抱え後ろから私を見下ろしている。

見下ろすその顔は、何故か笑みが浮かんでいた。

私は顔に部品の油を付けたまま、顔を赤くして彼を見ていた。