「……お前じゃ、なにも感じないわ」

口をポカンと開けていた佐和さんは、しだいに真っ赤になって表情が険しくなっていく。

「…なんでよ。この子と私の違いは何よ?」

「はあっ、違い⁈そんなことわかるかよ。ただ、怒られて歯向かってきたかと思うと、自分の非を素直に認め、改めて直そうと努力するそんな姿が可愛くて仕方ないな」

最後の方は、私を見つめて語尾が甘くなる。

「私だって、努力してたわよ。昔、ただ一緒にいたくて安易な気持ちでバイトした私を怒ったわよね。だから認めてもらいたくて頑張って、このお店のスタッフに入れてもらえた時は嬉しかった。仁は、私を好きになるはずだったのに、あなたが来てから仁の心は私に向かなくなったのよ」

怒鳴り散らす佐和さんを止めたのは悪魔の冷たい言葉だ。

「……どんなに努力しても、お前が恋愛対象になることは一生ない。俺にはこいつだけだ…いい加減、お前のことを思っている奴のことを見てやれ」

冷たい口調の中で、『こいつだけだ』と向けられた甘い視線にドキンと胸が高鳴り頬が染まる。

佐和さんにギロッと睨まれ目を逸らしてしまうけど…そんな状況でも嬉しくて仕方ない。