私、榊原ひかりは先週から高校生になった。
友達が出来るか不安だったけど、後ろの席の柴崎結衣ちゃんがフレンドリーだったから仲良くなれた。
それに中学一年の時からずっと同じクラスの落合翔太くんもまた同じクラスだから、なんだか緊張せずに済んだ。担任の女の先生も優しくてお姉さんみたい。
びっくりするくらい、私の高校生活は順調な滑り出しをしていた。
「ねぇ、ひかりんはバイトする?」
お弁当を食べながら結衣ちゃんがふと訪ねてきた。
「うーん…迷い中…。私のせいで、バイト先に迷惑かけちゃうかもしれないし…」
苦笑しながら私が答えると、結衣ちゃんは不服そうな表情で私の額を軽く小突いた。
急に何するんだろう。私、そんな悪いこと言ってないはずなんだけど…。
「んもー、また、そーゆーマイナスなこと言って…。もっと自分に自信持ちなって!」
そうだった…。
結衣ちゃんは私がマイナス思考なことが気になるみたいで、度々注意してくる。でも、これがなかなか癖になってるみたいで直らないんだ。
「で、ないの?アルバイトしてみたいなーってところ」
しょんぼりと卵焼きに視線を落としていた私に結衣ちゃんが更なる質問をする。
「ないこともないよ…っていうか小さいときから憧れてたところがあるんだけど…」
視線をお母さんお手製の卵焼きから結衣ちゃんに移す。
うわっ、目がキラキラしてる…!
「…喫茶店で…バイトしたいなー…なんて…あはは、無理だよね…」
勢いよく結衣ちゃんが立ち上がった。
「放課後、そこの喫茶店行こう」
結衣ちゃんは鉄砲玉みたいな人です…。