体を動かしてみることにした。

水から出ると、直ぐに乾いた。

白いワンピースを着ているようだ。

幽霊にでもなったみたい。

いや、本当に幽霊になったのかもしれない。


そんなことを考えながら、まだおぼつかない足を動かして、花の咲いていない道のようなところを歩いて行った。

しばらくすると、花よりも少し強い光を放つ大樹が見えてきた。
幻想的な風景だ。

と同時に、見覚えのある人影が見えた。

「やっと起きたのかい?」

にこにこ笑うあの、黒い翅の少年は私に話しかけているようだ。

「ここはどこ?」

ここに来て、私は最初の疑問を口にする

「ここは僕の世界さ。」

が、求めているような回答を得られず、少し戸惑う。

少年は私が無言なのを気にしていないようで、勝手に話を進めた。

「君は今から僕のものになる。契約を交わすんだ。」

「何故?」

とても理不尽で傲慢で自分勝手な言い分。
それに従うにはそれ相応の理由や報酬が必要だ。

と、普通の人なら思うだろうから、理由を聞いてみた。

「君を愛しているからさ」

またもや意味不明な言葉で返された。

「そんなこ…」

そんな答えじゃ貴方には従えない、と続けたかったが、ふと思考回路が回転した。

少年は私と結ばれる(?)ために私をここに呼んだ。
だから嫌だと否定すれば多分、放っておいてはくれないだろう。
ましてや、彼は「ここは自分の世界だ」と言った。

自分に拒否権はないのか、と瞬時に把握した。

なぜそこまで冷静に思考できたのか、は不明だったが、彼が裏のありそうな貼り付けの笑顔を向けているから、ということにしておく。

そもそも○にたかった、という願望、
世の中から除外されたかった、という願望は、多分達成できたから、私に思い残すことはない。

それでも少し覚悟を決め、自分に言い聞かせた。

「あなたと契約を交わすことで、私と貴方はどうなるの?」

「僕は僕の命を君から貰う。君は僕の永遠の愛を貰うことになる。」

彼の言葉はさっきから抽象的すぎて、想像がつかない。

すると、彼がやれやれ、と言ったように肩をすくめ、具体的に話をしてくれた。