僕は、紳士のはず、なのに…

なんてことを…!!

彼女があんな格好をしていたとはいえ、なんて不純な…!

この前は契約という名目が存在した。
それに、少し格好つけていたから、その時は「しょうがないのだ」で言い訳ができたが…


…罰だ。

罰を与えなくては。

とりあえず両腕でも焼くか。いや、後片付けが大変だ。

いや、爪を自分で剥いでいく、という方がいいだろうか

いやいや、電気の通った水の中で彼女に懺悔するのがいいだろうか…

体は、彼女と契約を交わしたことで2分もすればすっかり元通りになるだろう。
生と死さえも覆せるほど…

あれこれ考えている内にふと気がつく。

彼女に命をもらった、あの荒野でのこと。

自分が血だらけだったのを見て、彼女は心底心配そうな顔をしていた。

彼女の魂を覗いた時、あまり人情に溢れていないな、と思ったのに。

あの「僕だけに向けた表情」を見た時、嬉しくて優越感に浸っていたことを思い出す。

自分の体がまた傷つけば彼女にもっと迷惑がかかる。

彼女がもっと悲しむ。

彼女の悲痛に歪む表情はたまらなく好きだが、悲痛に歪んでほしいとは微塵も思わない。


自分の体を傷つける考えは捨て、考えに考えた挙句、やっと名案を思いついた。


「僕は彼女に指一本触れてはならない!」


…自分にしては良い考えだと思いつつ、内心、とても後悔した。

何故口にしてしまったのか。
言葉にしてしまえば、実行する他ないではないか…

別に自分はドMなのではないと思う。

ただ、自分以外の誰かとコミュニケーションを取るのが苦手なのだと思う。
あまり経験がないから。

こうすることで対人関係が保たれると思っていたのだ。