「今日のおーちゃんも、素敵」



両手を顔の前で組んでキラキラ光る瞳で見つめるのは窓際前から3番目の席に座る私の愛しい人黒田音玖(くろだおく)くん。
ずるっと気だるげに椅子の背にもたれながらぼんやりと外を眺めている。

ああ、そんな姿も絵になるのね。



「悪趣味」

「む、聞き捨てならない!いくらまぁちゃんでも許せないんだからねっ」



聞き捨てならない言葉を発するのは私の前に座っている友だちの神崎真央(かんざきまお)ちゃん。
冷たい表情で呆れたように私を見る。



「暗くて、なに考えてるかわかんなくて怖い、変な人・・・。彼が言われてる事よ」

「そんなことないもん。おーちゃんはね、他の男子と違って大人なの!ちゃらちゃらしてなくて、ちゃんとした人なの!みんなにはその良さがわからないんだ」

「良さねぇ」

「いいの。わからなくて。おーちゃんの良さは私だけが知ってればいいの。誰にも教えてあげないの!」