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目的地らしきものが見えて駆け出したフリュイは、僕より先にそこの前に着いてそこで叫んだ。



「つ、い、たぁー!」



お菓子のお家のような外装をしたカフェを目前に、地図をパァッと投げて喜ぶフリュイ。


そんな彼の真上に降臨なさる太陽が、頑張ったね、というように目一杯照らす。



こらこら、まだ使うかもしれないんだから投げないでよ。


地面に落ちた地図を拾っていると、僕の名前が呼ばれた。



「バベル!」



……その声は。



「リーシャ!」


「うん! いらっしゃいませ〜」



カフェ・レヴから出てきたウサギのように2つ結びをした華奢な女の子が僕に微笑んで店内に僕らを招き入れた。


ほのかに香るコーヒー豆の香りが鼻をくすぐる。



「遅かったですな、迷ったりしてたんです?」


「え?」


「いひひ、待ってたのですよ」



外装とは一転した落ち着いたアンティークな基調の溢れる店内で、座るように促され、僕らはカウンターに座った。


カウンター越しにいたずらっ子のような笑みを漏らすリーシャは、この店【カフェ・レヴ】のオーナーの一人娘である。


故に、僕とレティシアがここに来ていた幼い時からの知り合いだ。



「待ってた、って?」


「そろそろ来るだろうと思って」


「え、なんで?」



リーシャに来るから、といったような連絡は一切していない。


なのに来るのがわかっていたのは、おかしい。



「そりゃあ、バベルが城からいなくなったーて話題になってるからなのです」


「……なるほど」



それなら合点がいく。


城からいなくなった、と話題にならない方が不思議だ。


何てったって僕は一国の王子なんだから、そういう道理があるのだ。