***


「久しぶり、セイラ!」


太陽が燦々と街を照らす中、城を抜け出した僕は、金春色の髪を揺らして大好きなパン屋に足を運んでいた。


「あら、バベル様」

「また来ちゃった」

「まさか王子お1人で?」

「もちろん」

「お付きの人は?」

「気付いてないんじゃないかな」


ふふん、と得意げな僕を見て、呆れた様にくすくす笑う彼女は、真っ黒な長いストレートの髪がトレードマークのパン屋の看板娘セイラだ。


「今日は何をご所望ですか?」

「いつものくださいな」

「チョココロネですね」


頷けば、サラッとビニールを取り出してコロネを袋に入れてくれる。


「それにしても、今日は随分と大荷物ですね?」

「まあね」


セイラに指摘された鞄は、確かにいつも街を散策する時のものよりも一回り大きい。

訳あって、テントや腰につけているのと別に、愛用している短剣が入っていたりするからだ。


「どちらに行かれるんですか?」

「秘密、としたいとこだけど」

「そう言われると気になります」


わくわくした様子のセイラが可愛らしくて。


「じゃあ、セイラには教えちゃうね」

「わーい!」

「……あ」


ついつい、口が滑った。