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ガレットの店を出て、だいぶ経った。


続いていた街並みはとうに消え、人とすれ違うことがあまりなく、目立たなさそうな静かな道を歩いていた。


周りは草が生い茂っていて、いかにも冒険が始まった、という感じ。



「バベル、見て!」


「なんだよ、早く歩けよなー」



後ろをひょこひょこ歩くフリュイを見るために振り返る。



「ジャジャーン! ルディ肩に乗った!」



その細っこい肩に乗っかる鷹のルディはキリッとしていてなんだか凛々しい。


さっきまで僕の肩にいてくれたのに、こっちに戻ってくる気配はない。


フリュイの肩の方が気に入ったらしい。


それがちょっと悔しくて、僕は感情を込めない声で返した。



「おーすげー」


「うわ、棒読み。酷い」


「おーすまねー」


「もういい。やめて」



心底嫌そうな顔をするフリュイを見て僕の口の端が持ち上がった。


それならばもう少し棒読みで遊んでやろう。



「ところで、バベル。どこに向かってるの?」


「さーどこだろねー」


「ちょっと、やめてって言ったじゃん」



意外にも根を上げたのが早かった。


むう、と口を尖らせるフリュイに、悪ふざけが過ぎたかも、と思った。



「ごめんごめん」


「……しょうがないから許したげる」


「それはどうもありがとう」


「ふーんだっ」



プイッと逸らされた目、膨らんだ頬。


これが世に言うツンツンしている、というのだろうか、こういう種類の人間は初めて見た。



「で、どこ行くの?」


「僕の古くからの友人が経営しているカフェに行こうと思ってる」


「カフェ?」