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「もういいかーい」



瑠璃色の5枚の花弁を広げる花、ルリマツリの咲き誇る花園に、僕の少年らしい大声が響き渡った。


ルリマツリの花が、僕の声に少し驚いたのかさわさわと揺れる風景が後ろを向いていてもわかる。



「まーだだよー」



その花の中からした声は、鈴のように綺麗な透明感のある音を鳴らして僕に返事をした。


僕は目を閉じて花が揺れる音を聞きながら、数秒動きを止めた。


そして、しばらくしてまた声を張った。



「もー、いいかぁい」



腰を曲げて張った声は、城の中にいるお兄様の顔が窓から覗いた程の大きさだった。


耳を立てて待っていれば、鈴が鳴った。



「もういいよー」



だんだんと消え入る声に、僕はくるりと体を反転された。



「よーし!」



タッタ、と足音を立ててルリマツリの花園の中へ踏み入った僕が探すのは、瑠璃色の髪だ。



「レティ、レティシアー!」



大好きな彼女の名前を呼んで、彼女の色を探す。



「ここかな? あっちかな?」



花を掻き分けて、静かに隠れている彼女を見つけようと奮闘する。



「レティシアぁ、どこー?」



声をかけても、もちろん反応はない。


隠れている場所を教えるようなものだから、彼女は声を出すわけがないのだ。