「終わった?帰るか?」

「お前な…」

最近境本は俺の帰りを待つようになった。

自転車に二人乗りするためだ。

駅まで少し歩くのも
億劫らしい。

「いいじゃないか。放課後デートみたいなノリで。二人乗りなんて少女漫画の定番なんだから」

「普通に道交法違反。あと漕いでるこっちはしんどい」

境本のカバンを持ってやって
昇降口へ向かう。

「君は過保護だな」

「好きな子には、優しくしたいお年頃なんだよ」

「軽々しくて信用ならないし」

「信用ならないって、俺が君を好きって信じてもらえてないの?」

「まあ、いや、それは、どうでもよくて」

「…照れたのか?珍しいね」

「違う。早く自転車を取ってきてくれよ」