季節は本格的に冬。

織田へと進軍するあたし達は、その寒さも感じないほどに緊張していた。



「才氷、ごめんなさい……」


馬に股がるあたしに馬を寄せ、黒い袈裟に身を隠した家光が申し訳なさそうに頭を下げる。



「家光、あたしは気にしていませんよ?」


対するあたしは、将軍家光に見えるように、きらびやかな着物を纏っている。



あたしが、忍びと疑うモノはどこにもいないだろう。
あたしは今、家光の影武者としてここにいる。



これは、あたし達が織田 信秋と直接対峙するための方法だった。


信秋は自分の身を守る為、徳川の目の前には姿を表さない。
今回は謁見という方法をとり、あたしが信秋を引きずり出す。


そこで、家光の代わりにあたしが家光として赴き、和平を約束させられなければ、直接叩く。