「カニ!エビ!ウニ!イクラ!イカ!」


お目目がキラキラしちゃってるわ、私。
女の子だから、ってそんな理由じゃないわよ。
目の前に広がる、海の宝石たちに心を奪われているのよ。


そう、北海道は海の幸の宝庫だったんだ。


食卓が新鮮な魚介で彩られる。
テーブルに所せましと並んだ、いくつもの料理。
犬ゾリ体験ってそんなに儲かるの?
民宿ってそんなに儲かるの?
北海道初心者にはたまらない食事。


宿で出してる料理の余りとか、お裾分けがほとんどだって聞いたけど。
これだけ豪華なものを毎日食べることが出来るのかと思うとゴクリと喉が鳴る。


お箸を持ったまま感動し、どれから食べていいのか迷って手がつけられない。
そんな私に、向かいに座る青い瞳の彼が悪態をついた。


「早く食えよ。客のあんたが食い始めないと、こっちの箸がつけられないんだわ」


綺麗な顔して口が悪いこの人。
それを知ったのは5分前だった。


そう。5分前の出来事。
「夕食が出来たわよ〜」って裕美さんが声をかけてきた19時半。
なんだか実家みたいだな、って思いながら捻挫した右足をかばいつつ階段を下りて、ものすごく広いリビングに入った。


薪ストーブが焚いてあって、映画のワンシーンにでも来たような錯覚に陥るほど風情のあるリビング。
そこに大きな木製のテーブルが置いてあって、大皿に盛られた料理がいくつも乗っていた。


「あ、滝川さん。好きなところに座ってね」


私に気づいた裕美さんにそう言われて、適当に腰を下ろしたのだ。
そこへ続々と従業員らしい人たちがやって来る。
続々と、と言っても4人ほど。
他にも2人いるらしいんだけど、その人たちは宿の方でお客様の対応をしているんだそう。


従業員は年齢も性別もバラバラ。
中でも私と1番年齢が近そうな人は、青い瞳の彼くらいしかいなかった。