あっという間に週末になり、啓さんと札幌へ行く日がやって来た。
待ちに待っていたけれど、色々大丈夫かしらと不安に駆られる日々を送っていた私としては、ようやくこの日が来たかという思いでいっぱいだった。


一泊分の荷物をバッグに詰めたものの、必要最低限の物しか持っていかないので大した重さにもならない。
念のためガイドブックも持参しておく。


てっきりバスで札幌まで行くと思っていた私は、朝っぱらから驚いた。


「車で行くんですか!?」


朝の7時半。
駐車場で待っていた啓さんは、当たり前のように白い車に私を引っ張り込んだ。


「車の方が何かと便利なんだわ。行きたいところを遠慮なくリクエストしてきたのはどこのどいつだべなぁ?」

「私です……」


4時間半も運転させて申し訳ないという思いで、運転席に座る啓さんを見る。
まだ暖まりきっていない車内で、朝のキラキラした日差しに照らされる啓さんの髪の色がこれまた一段と綺麗に見えた。


出掛けに政さんに声をかけられたのを思い出す。
「2日間で、頑張ってくるんだよ!」と。


一体何をどう頑張ればいいのか、それは置いといて。
右も左も分からない札幌を、慣れた人と歩くのは楽しみで仕方ない。
しかも美味しいお店とか存分に知ってるだろうし。


それに、今日の啓さんはいつもと違う。
仕事中は常にかぶっているニット帽を今日はかぶっていないし、防寒ズボンしか履いているのを見たことがなかったけれど今日はデニムを履いている。
靴だってスノーブーツじゃなくて、普通の靴だ。
一日中外にいる仕事とは、今日は違うのだ。


その証拠に私だって毎日ほぼスッピンで仕事していたのを、今日は数ヶ月ぶりにメイクした。
長いこと履くことのなかったロングスカートなんて履いたりして、オシャレとは程遠い生活から一気に現実世界へ来たような気分だ。
東京にいた頃は毎日何を着ていこうと悩んでいたものだけど、そういった悩みはここで仕事をするようになってから皆無になった。