次の課題へと移った時、一階から声をかけられた。


「知世、ご飯よ!」


お母さんの声に時計をみると、すでに夜の7時になっていることが分かった。


集中して勉強をしていたので、ここまで時間が経ったとこにも気が付かなかった。


あたしは勉強を中断し、一階へと下りて行った。


いつの間にか帰ってきていたのか、お父さんが先に食卓に座っている。


「お父さんお帰り」


「あぁ、ただいま」


お父さんは眼鏡の奥の目を細めてそう言った。


お父さんはごく普通のサラリーマンで、これと言って取り柄はない。


趣味は魚釣りだけど、それも特別上手なわけじゃなかった。


「あなた、知世の数学のテスト、見てやってよ」


お母さんが嬉しそうにそう言い、あたしのテスト用紙をお父さんに見せた。


あたしは自然と背筋が伸びて、ほほ笑んでいた。


「そうか、よく頑張ってるな」