布団から起きると、枕元の携帯に手を差し伸べる。

 婚約破棄を言い渡され、最初の週末を迎えようとしていた。初日は眠れずに寝不足状態で会社に行くことはあったが、日数が経過するにつれ疲労が蓄積したのか、昨夜は睡眠をとることができた。

 あれ以降、彼から電話がかかってくることも、メールが届く事もない。彼は別れようとは言わなかった。婚約破棄の話は、彼の中で別れ話に匹敵するようなものだったのかもしれない。だとしたらもう一度、彼に向き合う必要があるのだろうか。

 このままわたしが連絡を取ろうとしなければ、自然消滅の可能性もあるのだろうかとまで考え、軽く笑う。まだ数日だと自身に言い聞かせた。

 結局、友達にはともかく、親にもまだ話をしていない。あれほど喜んでくれた両親の悲しむ顔を見たくなかったし、少なくとも話をする段階で心の整理をつけておきたかったのだ。話をするときに涙を見せれば、両親により辛い思いをさせてしまうのは分かっていたからだ。

 もっともわたしも初日から心の整理に努めていたが、心に湧き上がる様々な感情が、それらを難しいものへと変えてしまっていた。