わたしの頬にひんやりとしたものが振れる。突然の刺激に、わたしは思わず後ずさりした。そこには浴衣を着て、髪の毛を一つにまとめた仁美の姿があった。彼女がわたしの手に当てたのは、オレンジジュース。旅館内の自販機で買ってきたのだろう。

「何、ぼーっとしているのよ」

「ごめん。つい」

 年が明け、わたしは仁美と前もって予定していた旅行に行くことになった。一泊二日を予定していたが、金曜の夜に早めにあがり、二泊三日の旅行になった。

 あれから年が明けたが、岡本さんとはあれ以来会っていない。わたしもバタバタしていたし、彼とこれといって約束もしていなかったからだ。

 告白のような、告白でない言葉を告げられ、彼とどんな顔をして会っていいのか分からなかったというのもある。

「いいけど、年末くらいからずっとそんな調子だね。大丈夫?」

「大丈夫だよ」

「来週末に、ほのかの言っていたお店に行ってみようか。茉優さんという子にも会ってみたいし」

 わたしは首を縦に振る。わたしの言っていたお店というのは、もちろん茉優さんのお母さんのお店だ。