むかしむかし、ここではないどこかの世界で。本当にあったできごと。

冬に住む魔女は雪の中でしか生きられず、ふつう、人は冬のなかでは生きられない。

そんな世界でのできごと。


永遠の冬のなかで、ひとり生きてきた魔女は ある日、一冊の本を拾いました。

雪にまみれたその本は、金や銀の刺繍の施された見事な細工の美しいものでした。

魔女はそれに少しの間見惚れてから、そっとページをめくっていきます。




ー 明るく 美しく 心優しい姫 ー

ー    楽しい仲間たち    ー

ー  彼女を守る勇気ある若者  ー

ー   笑顔の溢れる世界   ー



ー     冒険の末に     ー

ー手に入れるのはハッピーエンドー



読み終えた魔女は、ひどい喪失感に襲われました。