直寿は「これ以上辞めとこう止めれなくなる」と微笑んで最後にチュッ！とリップ音を立て終わらせた。



「ご馳走様、美味しかったよ！稀美果、洗い物はやっておくからお風呂に入っておいで！」



「ありがとう。でも直寿先に入って良いよ！」



旅行の疲れも取れていないだろうし、今朝も早かったから体を休めてほしい。



「稀美果、テスト勉強があるだろ？それからテスト週間中は食事を八重さんに頼もうと思うんだけど？」



「え？どうして？私が作るよ」



「テスト勉強もあるし、無理して今朝みたいに遅刻するようじゃ困るから。学生の本分は勉強だよ、だからテスト期間中は学業に専念した方が良いと思う。将来の為にも」



「将来の為？…私はもう直寿の奥さんだよ！今の私が奥さんじゃダメなの？高卒だとダメなの？高卒の奥さんだと直寿は恥ずかしいの？」



直寿、私は直寿の奥さんだよ…

私じゃダメなの？…

このままの私じゃダメなの？…



稀美果は目頭が熱くなり唇を噛んだ涙をこぼさないように。



直寿は稀美果の頬を両手で優しく包むと唇を親指でなぞり

「唇が傷つくよ……俺は今の稀美果を好きになったんだよ！稀美果は俺の大事な奥さんだよ！今までもこれからも俺の奥さんは稀美果だよ、稀美果しか考えられない！俺は高卒がダメだと言ってるんじゃない。高卒でも大学に行っても専門学校に行っても良い。だけど、今、決めなくてもいいんじゃないかな？今はどの道に進んでも良いようにしておこうよ稀美果！」



直寿…



「はい…テスト勉強もちゃんとします。学生の本分をちゃんとします。でもお願い食事は私に作らせて！出来るところまでやらせて無理はしないから！もし無理の様だったら自分で八重さんにお願いします。お願い…」



「稀美果は頑固だな？分かった無理はしないって約束だよ！それから俺にももっと甘えろ！」と直寿は言うと稀美果の頬を流れる涙を親指で拭う。



「うん…ありがとう……直寿？」



「ん？」



稀美果は直寿を見つめ「大好き！」と言う。



「だから煽るな！」



直寿は稀美果の額を指でトンと突く。