翌朝、眼を覚ますと隣には直寿の姿はなく、寝た様子もなかった。書斎を覗くとソファーに毛布が置かれていた。


ここで寝たの?……


1階に降りるとダイニングテーブルには朝食が用意されていた。


いつもの様に八重さんが用意してくれたのだろう?
母屋とこちらと2箇所も食事の用意をさせるなんて申し訳ない。食事は母屋で取るようにしよう。


「八重さんおはよう。私、食欲無いからカフェオレだけで良いよ。」


するとキッチンから現れたのは直寿だった。


「八重さんは居ない。それから朝食はちゃんと食べろ!」
と、テーブルにカフェオレの入ったマブカップが置かれた。

「えっ?これあんたが作ったの?」


稀美果は驚いて直寿に聞くと分かりきったことを聞くなと言うように睨まれる。


「他に誰が作るんだ?それから夫に向ってあんたは辞めろ!」


夫って…


「あんた…えーとあなただって昨日散々、馬鹿娘!馬鹿娘! って言ってたじゃない! 奥さんに馬鹿娘は無いでしょ!」


思わず奥さんと言ってしまったが、まだ私はこの人を夫と認めた訳でわない。


「あぁそうだな。じゃーこれからはお互い名前で呼ぶ事にしよう。稀美果、早く飯食わないと学校遅れるぞ!」


名前って直寿?直寿君?直寿さん?……
そんな事を考えながらパンに手を伸ばすと突然直寿に手を叩かれた。


「痛っ、なにするの?!」

「なにするの?はこっちのセリフだ! 食事の前にいただきます。だろ?」

「子供じゃないんだから良いじゃん!」

「挨拶もできないんじゃ稀美果は子供以下だな!」

「…………」


悔しいー!
なによこの人保護者か?!
挨拶すれば良いんでしょ!す、れ、ば!!


「い、た、だ、き、ま、す!!」

「良く出来ました。」


直寿は微笑みそして直寿も席に着くと手を合わせて『いただきます。』と言い食べ始めた。