お昼と同じ様に、津田部長がネクタイを緩めながら同じ席に着いた。私も同じに、向かい側の席へ座る。

「はいはいはい!ハナちゃん特製・有機野菜のポトフ!温まるわよ!」

席に着くと同時位にハナちゃんがスープを運んで来てくれた。フワッとコンソメの優しい香りが鼻をくすぐる。

「……わぁ、美味しそう」

「ささっ、早く食べて食べて」

私は、コクンと頷き、「いただきます」と言ってからスープを一口飲む。

味はとても素朴なコンソメ味。野菜の色々な出汁が溶け合って、角の無い、とてもまろやかな味になっている。ゴロゴロと入った野菜は、スプーンで解れる程柔らかく煮込んであって、コンソメを吸って甘味が際立っていた。

じんわりと、温かさが体全体に広がって行く、優しい味。

「美味しい……」

「でっしょー♡アタシの愛情もたっぷり煮込まれてるからね♡」

「そっか……」

だからハナちゃんの料理は美味しいんだ。

じわぁっ…と、視界が滲む。

「江奈っち!どうしたの!?」

「え……?」

訳が分からず顔を上げると、津田部長がハンカチを差し出してくれた。ハナちゃんは私を見て、オロオロとしている。

「?」

「……涙。拭きなさい」

「え?」

頬に手を当てると、濡れていた。

(あれ?なんで涙?)

そう思った瞬間、決壊の切れたダムの様に、どわっと涙が流れた。吹き出した、に近いかもしれない。

「江奈っち!」

「……ハナ、静かにして頂戴」

「だ、だって……!」

「とにかく、拭きなさい」

津田部長が再度ハンカチを差し出して来る。私は「ありがとうござます」と言って受け取り、涙を拭いた。涙を拭きながら、津田部長のハンカチ良い香りだな、なんて思った。