コズの旦那になった須和柊平。
こいつは私の中で、「無し」以外の何者でもなかった。


初対面でも自己紹介もしない、愛想笑いもしない、世間話もしない。
おまけに動きが恐ろしく遅い。
ダサいメガネをかけて、醤油顔と塩顔の境い目みたいな顔をしていて、確実に非イケメン。非モテ男。
同期だっていうのに話しかけても一言で片付けられ、面白味のない男だと常々思っていた。


だけど順の親友であり、仕事だけは手早くこなし上からの信頼は厚く、なにより私の大切な友達のコズと付き合うようになり、結婚してしまった。


なんでこんな男と?
いつも疑問だった。


でも、これまでの私の須和のイメージ。
それは彼の一部に過ぎないということを、今日初めて知った。











「門脇?」


明るい廊下の長イスで携帯を握りしめながらうつむいていた私に、探るように声をかけてきた。
ぼんやり顔を上げると、そこには須和が立っていた。


結婚式の時に仕事仲間の優くんに無理やり連れて行かれて買い換えた、オシャレメガネをかけて。
可もなく不可もない、デニムシャツにベージュのチノパンを履いて。
ここまでは想像の範囲内。


だけど、いつもと違う。
彼の顔は、何を考えているか分からないようないつものボーッとしたものではなく、焦りや不安が入り混じった顔をしていた。


「梢は?」

「まだ……。今、中で先生が内診と超音波検査してる」


イスから立ち上がって、診察室と書かれている部屋を見やって答えた。
私の返事で須和は「そう」とだけつぶやき、ゆっくりと長イスに腰かけた。