実は…そこなのだ。

 結婚式を1週間後に控え、私は切実な悩みを抱えていた。


 彼の下で3年働き、傍らで見てきた私はよく知っている。

 ハッキリ言って彼は、女癖が無茶苦茶悪く、かなり放逸な性観念の持ち主である。

 そんな彼と一つ屋根の下に住み、ましてやベッドまで同じだというのに。

 3週間過ぎても何もないというのは、一体どういう事か?

 悩んだ末、私は一つの結論に辿り着いた。
 
 すなわち、私自身の『魅力』が足らない。

 だから、いかな彼でも、全くソノ気にならない、という事なのではないだろうか。

 これはマズイ。
 このままレスが続くようであれば…

『ゴメン、あの時はああ言ったけど…
俺、赤野はやっぱムリだわー』
『そ、そんなぁ~』

 苦笑いで掌を合わせるオオカミさんが頭に浮かび、私はブルッと身を震わせた。

 イキナリ離婚、という事になりかねない!

 これじゃあ、このままじゃいけない。
 結婚式までには、ぜひとも何とかしなくては!

 ハンディクリーナーを握る手に、私はぐっと力を込めた。