さて、式の当日。

 私達は都内の教会で、ごくごくフツーに式を上げた。

 「結婚式」
 それは女の子にとって、憧れのセレモニー……

 だが、私にさしたるこだわりはなく、可愛いドレスを着せてもらってお姫様みたいに扱って貰えれば、それで満足だ。

 ってか、プロポーズからの展開があまりに急すぎで、何とか体裁を整えてホッとしているのが本音だ。

 何より嬉しかったのは、学生時代の友人たちに、カレの自慢をやっと信じて貰えた事だ。

 左手の薬指に、プラチナリングが嵌められて……
私達は祭壇の前で愛を誓った。

 だけど私としては、プロポーズの時くれた、シルバーリングの方が思い入れは深い。

 だってそれは、彼がずっと身に付けていたもの。
彼の体温を、直に感じられるから。


「アキトッ…私と行きましょう」
「そんな女にダマされちゃダメよ!」

 途中、2から3名のドレスアップしたお嬢さんが花婿略奪に現れたり、誓いのキスで、拍手よりブーイングが大きかったりと些細なハプニングはあったものの、滞りなく式は終了。

 お見送りのフラワーシャワーに投げ込まれた生卵も巧みに避け、難を逃れる。
 草食動物的カンの良さと、柔軟な身体、何より鈍感力は私の誇るべき長所である。


 にしても…
 彼の女性遍歴に纏わる苦労は、今後も絶えることはないのだろうか。