「ふあ〜……」

朝から大きなあくびをする私は、のん気に教室に入った。


「おっは……よ?」


あれ……?

教室のドアを開け、誰構わずいつものように挨拶をした。


だけど、みんなの様子がおかしい……。


目を合わそうとはしてくれないし、挨拶だっていつもなら返してくれるのに、返ってこない。


「………?」


わけがわからないまま、自分の席へと向かう。



「……っ!! なに、これ……」


私の席は、ほんとに自分の席?って思ってしまうようなヒドイものだった。


机には、“キモ”とだけ大きく書かれ、机の中に手を入れれば、クシャクシャになった大量の紙が入ってた。

なにか字が見えたかと思い、紙を全て広げた。



“さすがに調子乗りすぎ”

“猪原くんはお前のことキライなんだよっ!! わかれブス”


“いくら罰ゲームだからって、やりすぎ。迷惑かけてること知れ!!”


そんな、たくさんの文字が書かれていた。


紙を持つ手が震えてる……。


バッ!っと周りを見渡すと、女子がクスクスと笑っていた。



そんな時、


──ガラッ

クラスのドアが開いた。


い、猪原くんだ……。


前から3番目の私は、机の中に紙を入れ、とっさに手で机を覆い隠した。


チラリと猪原くんと目が合い、バレたくない一心で、私は


「あはは……」

なんて、作り笑顔だけど、笑ってみせた。


猪原くんは、そんなことも気にせず黙って私から通り過ぎ、後ろの自分の席へと向かった。



「なんにも……なし、か」


小さく呟いた私の声は、誰にも届かず、ただポツンと座っていた。



だが、こんなことは今日だけではなく、教科書がなくなったり、落書きされたり、日に日にヒドくなっていくばかりだった……。