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「優音、はい、コレ」


「は?」


鳳皇の倉庫に着くや否やバイクから飛び降りたあたしは素早くヘルメットを取り、優音に手渡した。


「あたし先行くから」


一言だけそう告げ、まだバイクに跨がったままの優音をそのまま放置してその場から駆け出す。


「ちょ、凛音!!」


慌ててあたしを呼び止める優音。


けど、あたしは止まらなかった。


一刻も早く十夜達の真意を知りたい。


頭の中にはもうそれしかなかった。








「……え?」


「凛音ちゃん?」


階段へ向かっている時、バイクをいじっていた鳳皇メンバーは走り去っていくあたしを見て怪訝な顔をしていた。


当然だろう。

今のあたしの格好は余りにも酷いものだったから。



暴れたせいでグチャグチャに乱れてしまったボブのウィッグ。


服装に合わせて大人っぽくした化粧もきっと剥がれ落ちているだろう。


そして、未だチクチクと痛む左頬。


見てはいないけど、きっと赤くなっているはず。


お気に入りの真っ白なシャツワンピはシンにビリビリに破られ、今じゃもうただのボタンの取れたシャツに成り果てていた。


極めつけは両足共に裸足。


最初こそ痛かったが、今ではもうすっかり慣れ、傷みは一切感じなくなっていた。



どこからどう見ても不自然な格好のあたし。


優音が“凛音”と呼んだからあたしだと認識されたものの、それがなかったらまた不審者扱いをされていただろう。