さっきの出来事は、やっぱり幻だったのではないだろうか？


そう思いたいのだか、私のポケットに入っている、先ほど返却されたハンカチがその仮定を否定する。


(それにしても、投げつけることはないでしょ。
しかもこれ新品下ろし立てで全然汚くないんだから！)


「結衣子、危ないっっ」


「えっ？」


と言う暇もなく、体育の真っ最中にも関わらず全く別の思考だった私の顔面にはバレーボールが直撃した。


「いったー……」


不規則に弾むバレーボール。


さっきはハンカチ、今バレーボールと今日はなんて厄日なんだ。


「あら、ごめんなさい」


そう言って、私の前に現れたのは。


辻峰鈴菜(つじみねすずな)。


こいつももちろんおジョーで、桐谷率いる御曹司グループにいつも引っ付いている派手な女子グループの一員。


「さっきからボーッとしてらしたからボールを回さないとと思っていたら力が入ってしまいましたわ」


そういいながら高笑いをする辻峰。


(完全にワザとやったな、コイツ…)


「別に大丈夫だから」