朝、07:00。


あたし、広瀬 朱里(ひろせ しゅり)はいつもの日課で、高校へ向かう前に、東京の中心に立つ時計台を見上げる。



時計台に埋め込まれたエメラルドの宝石のような石に、あたしは笑いかける。


「来たよ、クロノス」


そう、あたしは普通の高校生。だけど、他の人には聞こえない、この時計台に宿る人工知能と、会話する事ができた。


《【朱里】》


あたしの名前を呼ぶ、その人工知能は、『クロノス』と呼ばれているらしい。


この世界の時間を管理しているのだと、クロノスは言った。


「おはよう、クロノス。今日も光が反射して、キラキラしてて綺麗だね!」

《ソウデショウカ…私ニハ、タダノ石ノモデル端末トシカ…》


クロノスの本体はあのエメラルドの石で、時計台はあくまでそれを埋め込んだ土台でしかないらしい。


クロノスと始めて会話したのは、宮城から東京へ引っ越してきた、小学生の時だった。


小学校の社会化見学で、この時計台を訪れたのが始まりだった。