ケータイ小説 野いちご

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泣いてもいいよ。

◆雨音と本音






 泣けなくなったのはいつからだろう?

 どんなに悲しいことがあっても、人前で涙を流せなくなった。

 胸が痛む度に、顔を俯かせて、唇を噛んで、涙を堪えるのが癖になっていた。

 ……本当は心の奥底でずっと思ってたんだ。

 もしも、正直な気持ちを打ち明けられる相手がいれば。

 そうしたら、私は――――。




「あら、唯ちゃん。食欲がなかった?」

 和泉くんに助けてもらった、その日の晩御飯の時間。

 スプーンを握ったまま、ぼんやりとテーブルの上のカレー皿を見つめていたら、向かいの席に座る恵美さんに話しかけられてハッと我に返った。

「い、いえ。ちょっと考え事しちゃってて……ごめんなさい」

 やだ。私ったら食事仲にぼーってして……。

 慌てて姿勢を元に正し、カレーライスを口に含む。

 辛いものが苦手な私のために恵美さんが作ってくれたバターチキンカレーはとっても甘くて美味しく、ほっぺたが落ちてしまいそう。

「唯ちゃん用にヨーグルトと生クリームを多めに入れてみたんだけどどうかしら?」

「すっごく美味しいです……!」

 最初のひと口目以降、パクパクと口に運んでいく私を見て、恵美さんが嬉しそうなに瞳を細めて笑ってくれる。

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