イヤだ…
そんなの……イヤだよ。
俺には心に決めたヒトが…


「う、う、うわああぁ…!!」

 ジリリリリリ…

 自分の絶叫に驚き、ガバッと起き上がったと同時に目覚まし時計が鳴り響いた。

 午前5時。

 大神秋人の朝は早い。

 30歳になったのを機に始めたランニング。
 そのため、彼は近頃、いつもこの時間に起床することにしていた。

 ベッドに半身を起こした彼は、自分が汗だくになっているのに気が付く。

 酷い夢を見ていた。
 近頃の夢はいつも変だが、今日のはまたいちだんと寝覚めが悪い内容だった。

 えーっと、確か………………

 あれ?思い出せない。

 まあいい、どうせまたいつものエロ妄想だ。


 彼はもう随分と長いこと、彼の部下、赤野燈子への恋に胸を痛めていた。 
 会社では自他も認めるプレイボーイ。
 こと女性には絶対の自信を持つ彼が、なんと2年以上も手出しはおろか、想いを告げることすら出来ずにいる。

 でも…
 にしては…

 チラッと下に視線をうつし、自分の状態を確認した彼は、おや?と首をかしげた。
 
 って、
 うぉいっ、何カッコ悪いことやってんだ!
 
 気を取り直し、彼はパパンと己の頬を打つと、ベッドを飛び降りて洗面台へむかった。