それからというもの、私は律を見かけるたびに意識を集中させていた。

校庭で体育をしているのが教室から見えると、授業中でも律の姿を懸命に探してしまうし、廊下ですれ違う時は耳までダンボにしている。

彼のそばにはいつも男女問わず友達がいて、昔と変わらない明るくて優しい性格のたまものなんだろうなと思う。

ただ……。


「ねぇ、逢坂くんに会いたいっていう他校の子がいるんだけど、どう?」

「んーどうしよっかな。俺、紹介料高いよ?」

「え~!?」

「可愛いコならまけてあげる」

「なにそれー」


律と彼のクラスの女子が、廊下でそんな会話をして笑い合っている。

それを横目に、私は心の中で大きなため息を吐き出しながら自分の教室へ入った。


……軽い。ティッシュくらい軽いよ、あの応対。

昔の律は絶対あんなこと言う人じゃなかったのに……やっぱりショック。

どの女子とも平等に仲良くしているけど、私とすれ違っても目すら合わさないし、忘れられているどころか興味もないとしか思えない。

でも、真木ちゃんが仕入れてきた情報によると彼女はいないらしいから、それだけは救いかな。