「おめでとうございます!! 《画家の手》は1億で落とされました!!」


ピエロがその場で飛び跳ねながら言う。


それと同時に大きな拍手と歓声が会場内に響き渡った。


「それでは《画家の手》の購入者様! ステージ上にどうぞ!!」


「藍那……」


エレナがあたしの手を握る。


あたしもその手を握り返した。


《画家の手》そのものを買うなんて、嘘に決まってる。


普通に考えて無理だ。


大丈夫。


きっと、隣の男性が何も知らないあたしたちをからかっただけだ。


そう思いながらモニターを見ていると、画面上に見慣れた人物の顔が写って、あたしは大きな声を上げそうになった。


それはエレナも同じだったようで、開いている方の手で口を塞いだ。


「これはこれは若き乙女でしたか! どうぞ、自己紹介を!!」


ピエロがそう言い、マイクを彼女へ差し出す。


彼女はマイクを手に持つと、満面の笑顔を浮かべた。


「はじめまして、特別会員ナンバー17です。かねてから絵を描く仕事をしたいと思っていたので《画家の手》を落とす事ができて本当に幸せです!!」


緊張した様子もなくハキハキと話す彼女は、同じクラスの藤吉風鈴(フジヨシ フウリ)だ。


教室内では大人しく、いつもなにか絵を描いていてあまり人と関わりを持たない。