「実加っ、朝来いって言っただろ?」





クリニックから帰ってきた実が、台所で作業する実加を呼び止めた。






「忙しかったのよ。」






「終わってからも、そそくさと自宅に戻ってるし。」






「そんなこと言ったって、カンナも帰って来ちゃうし、夕飯の支度だって。」






「そんなのいいよ。






それより体の方がっ」





「そんなのって!!!」





実加は家事を馬鹿にされたことに怒れたのか、それとも、自分の体に触れて欲しくないのか、苛立ちながら反抗した。






「とにかく、今から来いっ!!!」





「嫌っ!夕飯の準備っ!!!」





「ダメだっ!!!」






「嫌っ!!!」






ガチャーーーン!!!





二人のやり取りの中、カウンターからお茶碗が落ちた。






「あっ!」






落ちたお茶碗は、実加にとって大切なものだった。