その頃、燈子は。

 「……エステ」
 
 口をポカンと開け、目の前のビルを見上げていた。


 三鷹社長は役員会に向かう前、さる所に連絡を入れた。
 自家用車のベンツを呼び寄せ、運転手に行き先を告げると、燈子に向かってにこやかに言った。

「綺麗になっておいで」

 訳の分からないまま、車から下ろされた先が、銀座の一等地の中の、シャレた白っぽい煉瓦造りのビル。

 三鷹社長は徹底したコダワリ派のようだ。

 運転士に見送られ、怖々バラのアーチを潜った燈子を待ち構えていたのは、白いマスクの女3人。
 
「まあ…」
「これは……やりがいがありそうね」

 燈子を取り囲み、何やらヒソヒソと話し合っていた彼女らが、決意したように頷いた。

「さて、参りましょうか?」
「え、参るって、ドコへ?」

「どこって。全身コースに全オプション付き。
……地獄のフルコースに決まっておりますわ」

「……き、聞き間違いですよね?
なにかジゴクがどうとか…
あ、あれ?何で捕まえるの?あれ?」

 サッと両脇を固められ、捕獲された燈子は、そのまま中に連行されていった……

 ぴやあああっ!!