太陽はすっかり落ち、代わりに綺麗な星空が空を埋め尽くしていた。

半分だけの月は、十分な程真っ暗な山の中を照らしてくれていた。




「じゃあ、順番にくじを引いてー」


やけにテンションの高い声にあたしは夜空から視線を落とした。

見ると、暗闇の中懐中電灯で奇妙に顔を照らした実行委員の生徒が、アルミ製の缶を持って各クラスの代表に紙を渡していた。


……その笑った顔が、怖いから。


周りの空気が、賑やかになるほどあたしの顔からは笑顔が消えた。



「…来たーッ 肝試し大会!」



隣りからも、なんとも耳障りな声が。

ジトッと目をやると、すでにくじを引き終えている奈々子が興奮気味にあたしを振り返った。


「大丈夫だって! あたしが先に行ってお化けなんか退治してあげるからッ」

「……それはどうも」


あたしは、こんな暗闇を懐中電灯だけで歩くもの嫌なんだってば。



暗いのって、絶対怖いよぉー……



次々に暗闇に消えていく生徒達。


あたしはガタガタ震える体を両手で抑えながら、なんとか立っていた。




うわーん…ヒロぉ?

ヒロ……どこ行ったの?


バス以来姿を現さないけど、またどこかへ行っちゃったのかな?


別に、あたしのとこに帰ってきたわけじゃないだろうし。


だけど、ヒロの体ほんのりピンク色だから……
この真っ暗を照らすの手伝って欲しかったよぉ


もう涙目のあたし。


だけど、順番だけは容赦なくやって来た。



「はい。 13番の安達さん。 懐中電灯と……あとコレ」

「……コレってなに?」


クラスの代表、黒縁メガネ男子の榎本君の手の中には小さな紙切れ。


「何って、よく見て…お札だよ。 コレを洞窟の中の祠に貼って帰ってくる。帰り道はすぐだから……ほい、頑張って!」


キラキラした笑顔に背中を押され、あたしは無理矢理真っ暗な獣道の入り口へ。



ひええええ!!!


数メートル先、なんも見えないしッ!!!!



って……あれ?