今日も
空は抜けるような青い空。


どこまでも、高くのびている入道雲が
キラキラと輝いて見える、夏の朝。



あたしは、蝉の輪唱を聞きながら自転車をこぐ足に力を込めた。


体に纏わり付く風は、なまぬるい。


自転車で走るあたしの耳元で、少し心配そうな声がした。




「ユイ本当に行くつもり?」




あたしは、視線だけチラリと向けてまた前を見た。



「当たり前だよ。 ヒロは自分の家がどんなだったか気にならないの?」

「……俺、あれからずっと考えてたんだけど…よくわかんなくなってる。 自分がどうして死んでもまだこの世にいるのか。 未練…なんて思いつかないんだ」



まるでその場に佇んでいるかのように、あたしの後をついて来るヒロ。

昨日のように、また眉を下げて笑う。



なんだかその笑顔が酷く胸を締め付けた。




「……でも、きっとヒロの体は、ヒロが戻ってくれるの待ってると思う」




遠くに小さな森が見える。


ヒロの家は、あの森の入り口にある。



どうしてだろう。
あたし、あの森知ってる……


でも、行った事なんてない。


だから、これはきっと昨日あたしの中に流れ込んできたヒロの記憶なんだろうな。



細い路地を過ぎて、長い長い垣根沿いを行く。


その先に、緑の屋根が見えてきた。





「……あった」