8月。
うだるような暑さの中で、力仕事をするのは毎年毎年のことながら辛い。


決められた制服が一応あるからそれを着て仕事をこなすものの、かなり風通しの悪い素材だ。
夏くらいポロシャツにしてくれてもいいのにと、これも毎年毎年思うこと。


首にかけたタオルで汗を拭いながら、真夏の焼けるような日差しを受けて目を細めた。


「望月。それ運んだら少し休憩しよう」


後ろから扇さんに声をかけられ、ハイ、と返事を返した。


トラックの荷台から梱包された冷蔵庫を持ち上げて、扇さんと2人で運び出す。
入れ違いに3人のスタッフが荷台へ来ようとしていたので、扇さんが休憩だということを彼らに伝えていた。


「毎日毎日こうも暑いとやってられなくなるよなぁ、ほんとに」


俺と全く同じことを考えていたらしく、扇さんはため息まじりに愚痴りながらつぶやいた。


「こんな日はアイスでも買って帰ると奥さんの機嫌が良くなるんだよなぁ。あ、そうだ。望月も彼女にアイス買ってやれよ。きっと喜んでくれるぞ?」

「あー……、……はい」


曖昧に返事をした。
否定するのも面倒くさい。
言い訳するのも面倒くさい。


ただ毎日仕事をして、休みの日はひたすら寝て過ごして、時々友達と飲みに行く。
それだけ。


なるべく佑梨のことは考えないようにしていた。
あんな面倒な女と縁が切れて良かったんだ。
面倒くさがりの俺には手に余る女だ。
だからこれで良かったと思っていた。