最上来未からの手紙は、会った翌週には届いた。

話していた通り、封筒には今までにない厚みがあった。

ワクワクしながら封を切り、四つ折りにされた便箋の束を取り出した。

開いた便箋の中には、いつも通りの美しい文字が並んでいた。



『お言葉に甘えて、今回からは長く書かせて頂こうかな…と思っています。

どの位の枚数になるのか見当がつかないので、届いた手紙に驚かれているのではないか…と、少々不安を感じています。』



「平気、平気。俺の仕事は編集者だから」


ビッシリと文字の書き込まれた便箋6枚など大した量ではない。
それ以上の文字数を日々目で追いかけているのだ。


『その後お変わりなくお過ごしですか?小野寺 漠 様』


前置きの後で名前を呼ばれた。
小さく胸の内で返事をしてから続きを読み始めた。


『先日はお会いできて光栄でした。私の方はあれから変らぬ日々を送っています。

津軽先生のセレクトブックを読みながら、毎日気持ちを和ませ続けています。

この間は懐かしい作品のことを思い出しました。

私の中では最高傑作とも言えるべき先生の作品で、タイトルだけはどうしても思い浮かびませんが、ストーリーと印象深いページだけは今も深く心の中に残っています。』



長くなりそうだな…と思い、資料室へと移動した。

シ…ンと静まり返った部屋の隅にある椅子に腰掛け、ホテルのカウンターで話し込んだような雰囲気で読み始めた。