『最上 来未様、いや、どうか来未さんと呼ばせて下さい…』


送られてくる都度、変わり続けてきた呼び方は、とうとう名前だけになった。

堅苦しさの抜けた手紙の内容は、書き方もこれまでとは違った。




『ーー前回の無礼な手紙を許して下さい。

来未さんが謝る必要なんて、きっと何処にも無かったはずなんだ。

自分の気持ち一つで幾らでも対処出来たはずなのに、敢えてそれをしなかった。

絶対に怖がらせてしまうと思っても、腹立たしさも虚しさも送り付けたいと願ってしまった。



申し訳ない。

本当に謝らないといけないのは俺の方です。


ごめん。

本当に許して下さい。………』




頭を下げる小野寺さんの姿を想像した。

男性に頭を下げられるなんて、中学時代の部活動以来じゃないかと思った。




『来未さんの手紙を、今回もまた独りきりでいる時間帯に読みました。

勤め先でもある編集社の一室。いつも自分1人だけが取り残されるオフィス内で、窓辺に凭れながら文字を目で追いました。


今回はとても字が歪んでたね。

ドキドキしながら書いたと記されていた通りだと思えて笑ってしまったよ。



今、俺も同じ様にドキドキしている。

学生時代に一度だけ送ったラブレターのように、胸を躍らせずにはいられない状況なんだ。



君に会うことができると分かり、嬉しくて堪らない。

書かれていた文章をそっくりそのまま受け取っていいのか分からず、少々迷いはしたけど。