私は矢沢まり。
恋をしたい!そんな想いでいっぱいの高校2年生。でも…。

「おはよう!卓斗くん!」
「…あっ、や、矢沢さん。お、おはようございます。」

同級生の女の子にも、男の子にも、こんな感じの返事を返される。いつも、おびえた表情で視線も合わしてくれない…。今回も全然話が続かない。なんでだろう?

私、知らぬ間に何かしてるのかな?私は購買で買ったパンをぱくぱく食べながら悩んでいた。ん〜、やっぱりこの塩パンはサクサクしててたまらな〜い♡このために、どれだけ本気で走ったか…。…って、それ今関係ないからっ。考えても解けない問題に、わたしは思わずはぁっとため息を漏らした。
「知ってた?ため息つくと幸せが逃げるんだって〜」
そう言ってはにかんだのは私のクラスメートルである葉月ちゃん。葉月ちゃんは、私と違って、とても明るくて社交的でたくさん友達がいる。私は、自分にないものがある彼女のことを本当に尊敬している。
「そうなんだー。じゃあ、やめないと……」
「ん〜!いい香り。」
「…あれ、葉月ちゃん。」
「え?」
「その手にあるっていうか今食べ…あ!」
「ふふぁふぁふぇ〜(しあわせ〜)」
「あ〜…私の塩パン…!私の命の源…。」
いつの間にか、葉月ちゃんが私の塩パンを握りしめ、食べてしまった。
「まあまあ、そう落ち込まないで。」
「…うん。大丈夫だよ!逆によかった!役に立てて。」
葉月ちゃんは、私の言葉に目を丸くした。
「…なんか、矢沢さんっていい人すぎるよね。」
「いやいや〜。そんなことないよ。」
「…なんか、ごめん。塩パン食べちゃって。でも、このまま行くと、矢沢さん、泥棒とかも許しちゃいそう。心配。」
「あはは!泥棒かあ。」
葉月ちゃんは、顔をしかめた。
「……矢沢さんといると、心が痛む。」
「え?」
「いや、なんでもない。…なんかお詫びさせて?塩パンの!」
ええ…お詫び!?
「ええと…。」
「じゃあさ、さっきのため息の理由、教えてよ!それ、解決するから。」
自信満々に言う葉月ちゃん。頼もしい。じゃあ、言ってしまおう。

「あ〜わかるわかる。」
それを話したら、彼女は納得しているのか首を縦に振った。
「理由はたくさんある。」
そう言った彼女の顔が悲しいと感じたのは気のせいなのだろうか。