「綾子・・・・・・。
ごめんね。」
お母さんが、どうして謝るの?
「もっと、早く手術させてあげれば良かったのに。」
そんなことないよ。私が嫌がってたんだから。
心ではこう思ってるのに、素直に口から出ない。
「・・・・・・移植は成功したの?」
一番気になるところ。
だって、私のお父さんは・・・・・・、
この移植手術でドナーとの相性が悪くて死んじゃったんだもん。
「それは、絶対に大丈夫。」
自信を持った言い方……。
「なんで、絶対なんて言いきれるの?」
「あ・・・・・・、いや、まだ安静にしてて、経過を診ないといけないみたいだけど。
今のところは、大丈夫みたいよ。」
慌てた様子で言い直す。
なんか、お母さん怪しいよ。
何を隠してるの?
私の寝ている間に……。
何が起きたの?
「もう寝なさい。
また明日来るからね。」
椅子から立ち上がろうとするお母さんを、私は急いで止めた。
「お母さんっ!!!
一つ聞いてもいい?」
「なに?」
「ドナーって、誰?」
「・・・・・・綾ちゃん、ドナーはね誰だか教えてもらえないのよ。」
「あ、そう。」
そういうとお母さんは帰って行った。
そんな、ドナーを教えてもらえないことなんて、知ってる。
知ってて聞いたよ。
やっぱりお母さん、何か隠してる。