ここから見える景色は、空しかない。



だけど、ここが私の一番好きな場所。




人通りもなくて、陽当たりは最高。ポカポカしているけど、たまに開く扉からヒンヤリとした外の空気が入り込む。



その空気を感じる度に、外の人になれた気がする…。




空気のこもった病室は、どうも苦手……。



この病院に来て、もう何年になるんだろう。



家で過ごすよりここにいる方が長い気がする。



そんなことを思いながらボーっとするのが私の日課。









「ここ、そんなに気持ちいいの?」




ハッ!?



ポカポカ陽気につい睡魔が襲いかけたころ…



突然後ろから声がして振り返る。




誰?




そこには長身で若そうな顔をした男の先生が立っていて、爽やかな笑顔で、私を見下ろしている。





初めて見る顔……。




この病院の先生は、関わったことない先生でも、大抵は研修医以外は見たことがある。





けど、この人は知らないな。


  


「ここがお気に入り?




・・・・・服部綾子ちゃんっ。」





ん?誰だっけ?知り合い!?
なぜ私の名前を知ってるの……?
 


長身の先生を見上げながら、私の頭はフル回転で記憶を辿るけど、全く思い出せないでいる。




ちょうど外を歩いていた人が、私たちのいる中へ入ってきて、扉が開くと、びゅっと冷たい風が入って来た。



 
「ほら、




風が入ってきたら寒いよ。」




そういうと私の肩に、来ていた白衣を脱いで、ふわっと白衣を被せてきた。




先生が着ていたせいか、白衣の温もりで、体が少し温まる。




そのあとにフッと香る匂い。







優しい香りに安心感を覚えつつ気を許しそうになったけど、初めての医者にそれはダメだと姿勢を正す。