ケータイ小説 野いちご

正しい紳士の愛し方

Episode.3 愛してるんだよ……?




『いいよ。おいで』



『足りない……』



ホテルの薄暗い一室で交わしたキス。


肌に伝わる微熱がずっと冷めなくて怖い。



『百合……行……なよ……』



キスしたその唇で紡がれた残酷な言葉。



いやだ……聞きたくない!



大和さんとの距離はグッと近づいて、同じだけ……それ以上に離れていく。


まるでバネみたい。


どんなに踏ん張ってみても手を離せば元通り。


「樹ちゃん……樹ちゃんってばっ!」


呼ばれた方を向くと、里奈さんが血相変えてカットマネキンを見ていた。


マネキンの頭部に入れられたバリカンの道筋。


ど真ん中一直線で見事としか言いようがない。


「あぁっ……!」


バリカンの音とあちこちに飛散している髪の毛がもう手遅れだと告げていた。




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