陽が入隊してから三日が経った。


隊士達との信頼関係は相変わらずのものだった。


羽織りの届かない今は一番隊として稽古することがなければ、他の平隊士と関わる機会もない。


もちろんのこと、陽と会話したことがある平隊士はいなかった。


関係が進まないのは幹部隊士も同じであり、それどころか陽との会話は日に日に減るばかりだ。


藤堂なんかは必死に話しかけるが、あまりにしつこいため陽は無視すらするようになった。


それは藤堂にも非があるが、三日前までは少なからず喋ってくれた陽も、誰に対しても「ああ」だとか「嫌だ」ぐらいしか言わない。


しかも返してくれればいい方で、大半は目を合わせながらも黙っている。


光のこもらない目で視線を合わせられても、合った気が全くしないのだから無視といえば無視だが……。


現状変わったことと言えば、陽に監視がつかなくなった事しかなかった。


幹部達が盛り上がる隅っこで一人勝手にご飯を食べ、好きな時に竹刀を振るい、毎日湯浴みする。


これではまずい…と思ったのは、土方、藤堂、永倉だった。


現時点で陽を仲間として信用しようとしている派は、近藤、土方、沖田、永倉、斎藤、藤堂である。


それに対し反対派につく山南、原田、山崎には各々の考えがあった。


山南は特別信用したくないわけではない。だが新撰組の頭脳として、少数の反対派につく義務を感じていた。


やはり、誰かは警戒する心を持たなければならないのだ。


原田は言うまでもなく、普通に陽の事を好かないからだ。監視中に夕餉を運んでいた時からイライラは募っていた。


それに加え、いつまでも自己中心な押し黙った態度を取り、尚自分達と一線引いているのが気に食わない。


本当は誰よりも器の大きな男であるが、それ故に陽の様に完全に塞ぎ込んだ人と関わるのが難しかった。