瓦を打ち付ける雨は小雨ではなく、雑草を生やした荒い土の庭に大小幾(いく)つもの水溜りを作るほどの土砂降りだった。


パチパチと瓦は音を立て、軒先や屋根の先から地面へとポタポタと滝のように雫が垂れる。


閉まり切った部屋の中で布団に寝たまま、その音に耳を傾ける少女。


先日、春先からの殺人犯の容疑として沖田ら新撰組に捕らえられた者である。


と言ってもあの日からは二週間が経っており、少女はその間ずっと監視付きで部屋の中で過ごしてきた。


朝、昼、夜の三度決まった時間に運ばれる少しの食事と三日に一度許された湯浴み。


寝ている時でさえ誰か幹部隊士に部屋の外から見張られており、少女に自由な時間はなかった。


一日中部屋にこもっているのだから、自由といえば自由だが、部屋の中にあるのは布団だけ。


何もしなくてもただ時だけは過ぎて行き、何もないその時間に少女は時間感覚がおかしくなるのを感じた。


十日ほど前に蔵で死にかけていた少女を手当てした山崎が土方を呼んできた時。


『新撰組の隊士にならないか』


想像していなかった言葉を吐いた土方と、後ろで妙に機嫌の良さそうな笑顔を浮かべた沖田に少女は考える事もなくそれを断った。