濃く淀んだ灰色の空。


それを覆い隠す薄灰色の厚い雲から、真っさらな雪が柔らかく揺れながら降っている。


まるで命を乗せ天使が舞い降りるかのようなその様子は、静かな一面銀世界をより美しく…寂しく見せた。


降り積もった新雪は、柔らかく深く、人を立ち入らせないような、そんな雰囲気を放っていた。


「……」


その空を見上げる少女の頬に、流れるようにツーと雫が伝う。


少女はまだ五歳ほどであったが、その手に握られた刀と衣服にこびりついた血は、紛れもなく残酷な事実を突きつけるものだった。


その足元には、少女の足に比べ随分と大きな足跡が沢山ついていた。


逃げ惑った大人達の最期を示すような、実に悲しく力強いものだった。


少女を囲むように倒れた屍と、真っ白な雪を染める鮮血。


まるで花のように咲く赤い模様は、少女の心を染めながら広がって行った。


とある雪の降る冬のことーーー。


これが少女の人生の全てを変えた出来事だった。