恭弥が来ると約束してくれた日曜日。

よく晴れて、秋の真ん中にしては暖かい朝だった。
みんなでお出かけするにはもってこいだ。

せっかくの良いお天気だし、車で少し遠出して大きな公園にでも遊びに行こうか。
みんなで芝生をたくさん歩いて、アスレチックで心菜を遊ばせてやって、でも心菜はまだ一人じゃ滑り台ができないから、恭弥に手を握っていてもらわなくちゃ。
私は少し離れたところにあるベンチに座って、そんな二人をのんびりと眺めていたい。

二階にある自分の部屋のクローゼットから、先日恭弥に勧められて買ったスカートを取り出した。
鋏でタグを切り取ると、少しわくわくと心を浮かせながら、鏡の前で腰に当てた。

「似合うかな?」

そう声に出すと、私の足元で遊んでいた心菜がこちらを見てにこっと笑った。

「ありがとう」

彼女の柔らかな頬をぷにっとつついてから、私はスカートに足を通す。

「……似合うって言ってもらえるかな」

ぶっきらぼうな恭弥だから、そうそう甘やかしてはくれないだろうけれど。
わずかな期待を胸に、鏡の前で身を翻し、スカートの揺れ具合を入念にチェックする。


やがてガチャリと玄関を開ける音がして、恭弥がきたのが分かった。

「心菜。パパがきたよ」

私の声で心菜がハッと廊下の方を向く。
部屋を飛び出して下の階に行こうとするので、階段から落ちないように慌てて心菜を抱き上げた。

一緒にゆっくりと階段を下りていくと、一番下で恭弥がこちらを見上げて立っていた。
見慣れただぼだぼジーンズに、よれたパーカー。

「よぉ」

「おはよう」

いつもの調子で、私たちは言葉を交わす。

彼は私のスカートを見て、何も言わなかった。
ただ、無表情の中に、ほんのり笑みを織り交ぜる。

それだけで、十分だと思った。