「おかえりー」


玄関を開けるとカレーの香り鼻をくすぐった。



「ユウー?

ご飯食べる?それとも先にお風呂ー?」


そんなお母さんの声を背に受けながら、答えることなく階段を上っていく。



「ちょっと!?ユウー?

せめてただいま、くらい言いなさい!」


階段の下からお母さんの怒った声が聞こえてくる。

でもそれにも答えることなく、パジャマを持って下へ降りる。


「なに?先にお風呂行くの?

そうならそうと言いなさいよ」


「…うん」


服を脱いで、頭からシャワーを浴びる。


なんなんだろう。

これは、いったいなに?

どういうこと?


考えたくもないのに

さっきから同じ映像がぐるぐる頭の中を回っている。


コンビニの前。

トシと、わたしの知らない女の子。

そして、わたしの知らないトシの顔。


意味がわからない。

トシが学校の女の子と喋ってただけじゃない。

ただ、それだけの話。


それなのになぜか、その映像が頭から離れない。


なんだというのだろう。