運良く二人並んで座ることができた車内は、それほど混んではいなかった。

右に座った悠が、私の手を大事そうににぎって離さない。

今までもよく手を引かれていたけど、全然温度が違うように思えるから不思議だ。


「どこへ向かうの?」

「とりあえず終点まで。そのあとはヒッチハイクかな」

「ひ……!?」


ヒッチハイクって、本当にそんなことする人いるの? それって成功するものなの?

桜さんの登場から、スムーズすぎたこの流れ。

きっと綿密な計画の元に実行された逃避行だと思っていたのに。


「目的地は決まってるけど、まだ秘密。そのうち話すよ」

「今教えてよ……あ」


電車の窓から、巨大なテーマパークが見えた。

人工の山やお城のてっぺん、パークからホテルを繋ぐモノレール。そんなものが見えて、思わず目を奪われる。


「ねえ、ほらあれ」


そのテーマパークは日本に住んでいれば知らない人はいないぐらい有名なもので、思わずテンションが上がってしまった。