――…イライラはそんときからだ。




ふつふつと怒りとモヤモヤと同時に、昨日のことを思い出す。




あれは、教室で昼を食べて、友達と話している時だった。


顔を赤らめたクラスメイトの男、一人がドアの方を指差して「呼んでるよ」と声をかけてきた。



こいつ……なに、顔赤らめてんだ?って思ったけど、


指を指した先にいた人物に俺は、「なるほど」と、納得してしまった。



だって、そこにいたのは陽菜だったから。


ヒョコッと、ドアから遠慮がちに顔だけをこちらを向けて覗いてくる陽菜。


かわいい、けど……



『陽菜、教室には来るなって言っただろ』



さっきみたいに、他の男を無意識に惚れさすんだから。


それに、他のやつらに陽菜を見せたくない。



近付いて、不機嫌なままに、俺がそう言えば、


陽菜は、少しだけ萎縮しながらも



『く、来るなって言っても……飛鳥がなかなか中庭に来ないから心配して……』



と、言ってきた。



ふーん……心配?



早沢と楽しそうにしてたくせに?



『心配? はっ、そんなん嘘だろ』



あのシーンが頭から離れなくて、つい、そんなことを言ってしまう。